釘付けになる

 スマホを使いながらの通行による事故が増えています。このように「スマホに目が釘づけになる」といいたいとき,どのような表現を使うのでしょうか。Japan News(03/04/14付)より,2つの英語表現を拾いたいと思います。

(前略)

In October last year, a 47-year-old man was killed when he was hit by a train after stepping into a railroad crossing in Itabashi Ward while his eyes were glued to his cell phone screen.

(中略)

“People easily become riveted to smartphone screens because they display a lot of information,” a Tokyo Fire Department official said. “This increases the possibility of accidents because their vision narrows.”

 まず,1つめのglueです。名詞で「糊」という意味がありますが,このように動詞としても使われるようです。『ジーニアス英和大辞典』(大修館書店)によれば,「<目・耳などが>[…から]離れない,[…に]注意を集中する」とあります。また,We were glued to the TV.のように,通例,受け身で使われるようです。

 次に,2つめのrivetです。この語は,中期フランス語のriver(結びつける)に由来する語です(『ジーニアス英和大辞典』同上)。もちろん,英語のriverも同語源で,「岸と岸を結びつけるもの」ということです。板と板を留める金具を「リベット」といいますが,これも同じ語で表します。板と板を「結びつける」ものです。ここから,「固定する」という動詞が生まれ,人の注意を「固定する」ことから,人の目が「釘づけになる」という意味をもつことになります。

as good as

久々の更新となってしまいました。
今日は,as good as …が「…同様」という表現があります。例えば,

as good as new 「新品同様」
as good as dead 「死んだも同然」

のような例文をよく見るのではないでしょうか。

では,なぜこのような意味になるのはなぜでしょうか。なぜ,goodの「良い」という意味が出てこないのかというのが質問でした。私もこれは長い間,疑問でしたが,これを期に,少し調べてみました。

American Heritage Dictionary(5th Edi)で,as good asをひくと,practicallyやnearlyと出てきます。やはり,日本語の「…同然」と同じようです。ここで,goodの方も読んでみました。すると,in effect,operativeという説明が第13義に書かれています。

実は,goodそのものに,「良い」以外にも「事実上」という意味があったのです。たしかに,

a driver's license that is still good 「まだ有効な運転免許書」

のように,「有効な」という意味で使うことがあると思いました。
以上から,as good asは,「…と同じくらい効力がある」から転じて「…同様」になったと考えられます。この表現の後ろには,以下のように形容詞以外にもくるようなので注意が必要です。

That's as good as said.
(それは言ったも同然だ)

That's as good as said no.
(駄目だと言ったも同然だ)

(『新英和大辞典』研究社より引用)

また,この意味はhold goodという熟語にも残っていますね。例文は以下に取り上げておきます(『新英和大辞典』同上)。

The same thing holds good for us Japanese.
(同じことは我々日本人にも当てはまる)

英語教育、迫りくる破綻

 昨日(07/14/13)に「英語教育、迫り来る破綻」というタイトルで,明海大学の大津先生,和歌山大学の江利川先生,東京大学の斉藤先生,立教大学の鳥飼先生の4人による講演会が行われました。演題は以下の通りでした(登壇順)。

「グローバル企業の無謀な英語教育要求から子どもを守るために」(江利川春雄先生)
「英語教育混乱のカラクリ」(斎藤兆史先生)
「わたくしが小学校英語教科化に反対する3つの理由」(大津由紀雄先生)
「英語教育 慢性改革病とグルーバル症候群に苦しむ」(鳥飼玖美子先生)

 この後,1時間半に及ぶ座談会がありましたが,あっという間に過ぎ去った半日でした。この講演の中で先生方がおっしゃっていた,「英語のこととなると,理性を失う」という言葉が非常に印象的でした。現状の英語教育政策を変えるためには,きちんとこれまでの英語教育の歴史を見直す必要があること,また,現状の問題点は何なのかをきちんと認識することから始めなければならないことを感じました。現代は,グローバル人材,コミュニケーション能力という言葉に踊らされているようにも感じます。もう一度,英語を学ぶことや,グローバル人材とは何か,コミュニケーション能力とは何かについて再考し,財界人や政治家の英語教育に対する提言が本当に生徒のためになるのかについて我々は考え,行動しなくてはならないと感じた一日となりました。この問題に関しては,以下の書籍や江利川先生のブログ(希望の英語教育へ)に書かれていますので,興味のある方は参考までに。
http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man


http://www.amazon.co.jp/英語教育、迫り来る破綻-大津-由紀雄/dp/4894766639

willy-nilly

 Levinson(1983)のPragmaticsより引用します。

Again in contrast to DA, there is as little appeal as possible to intuitive judgements--they may, willy-nilly, guide research, but they are not explanations and they certainly do not circumscribe the data; the emphasis is on what can actually be found to occur, not on what one would guess would be odd (or acceptable) if it were to do so. (p.287)

 引用箇所は,Discourse Analysis vs Conversation Analysisについて書かれている箇所から抜粋したものです。CAはDAとは異なり,直感に頼った判断はほとんど行わず,膨大なデータを集め,データの中で実際に何が起こっているかを見ることに重点を置くものでだということを述べている箇所です。ここで着目したいのはwilly-nillyです。
 willy-nillyは「いやでもおうでも,いやおうなしに,行き当たりばったりに,手当りしだいに」という意味です(『リーダーズ英和辞典』研究社)。同辞書によれば,これは元々,will I nill Iという表現が短縮されてできたもののようです。nillとは古英語で,ne+willだそうです(『リーダーズ英和辞典』同上)。neとは古英語の時代から15世紀頃まで使われていた否定語です。
 以上より,willを意志のwillと捉え,neという否定語の意味と合わせると,willy-nillyは「私がしようとしまいと」という意味になり,「いやおうなしに」と訳せることが分かります。

dark

 エイプリルフールのprank(悪ふざけ)でアメリカで「Youtubeの閉鎖」が発表されました。その記事を,Japan Today(04/01/13付)より抜粋します。

 WASHINGTON ―In an elaborate April Fool’s prank, YouTube announced Sunday it was going dark for a decade, and that the site was merely an eight-year contest to find the best video.
 “It’s finally time to pick the winner,” YouTube representatives announced in a 3:32 minute video posted on its homepage.
http://www.japantoday.com/category/technology/view/youtube-announces-shutdown-in-april-fools-prank

 ここでのdarkの用法について触れたいと思います。darkには「(劇場・球場など)閉鎖中の,(放送局が)放送をしていない」という用法があります(『リーダーズ英和辞典』研究社)。ここでは,go darkとなり,goを第二文型で使い,「Youtubeが閉鎖となる」という意味で使われていると言えます。この意味でのdarkは,keep darkのようにkeepと共起して,「隠れている,(事を)隠しておく」という意味で使えるようです(『リーダーズ英和辞典』研究社)。LDOCEによれば,これは主にイギリス英語で使われるそうです。こちらも合わせて覚えておきたいですね。

 e.g. Please keep it about my new secretary.
 e.g. Apparently, he has a son, but he's kept that very dark.

 補足ですが.goの第二文型はcomeの第二文型と比較され,goはマイナスの変化,comeはプラスの変化に使われるとしばしば言われるのは周知のことでしょう。ここでも「閉鎖となる」というマイナスに向かっているため,goが使われているといえます。
 
 e.g. It has gone wrong, but it will come right in the end.

しかし,これには例外もあることが小西友七著『英語のしくみがわかる 基本動詞24』(研究社)でいわれています。以下は,comeがマイナスイメージのときにも使える例です。

 e.g. The buttons on my jacket came loose [undone].
 e.g. Our dreams have come untrue.

本書には,とりわけun-という接頭辞のつく形容詞ならcomeがくると考えられるとあります。

beef up

 少々昔の記事となりますが,DY(02/28/13)より英語表現を紹介します。みずほ銀行みずほコーポレート銀行の合併契約に関するものです。

Mizuho to beef up horizontal connection
 Mizuho Financial Group has announced its new management structure ahead of the planned merger of two affiliated banks, aiming at strengthening horizontal coordination within the organization's operations.
 Mizuho Corporate Bank and Mizuho Bank are set to merge July 1 to create a new Mizuho Bank.
http://www.yomiuri.co.jp/dy/business/T130227005089.htm

 ここではタイトルにあるbeef upを取り上げます。beef upは「強化[増強,増大]する,...に多くの金を使う」という意味で使われます(『リーダーズ英和辞典』研究社)。LDOCEで語義を確認すると,to improve something or make it more interesting, more important etcとあり,「あるもの[こと]を良い方向に持っていくこと」に使える表現だと分かります。
 beefには他動詞で,「(牛を)太らせる」という意味があります(『リーダーズ英和辞典』同上)。ここから,上記のような意味が生まれたと考えられます。beefの語源を辿ると,bov-に「牛」という意味があるようです。確かに,2000年代初頭にはやった,BSE牛海綿状脳症)問題のBSEの略であるBovine Spongiform Encephalopathyにはbovine(「牛のような」)が使われています。
 また辞書を読んでいると,「不平を鳴らす」という意味もあります(『リーダーズ英和辞典』同上)。LDOCEによると,この意味の場合,主に俗語で,aboutと共起するようです。beefと一言で言っても様々な用法があることが分かります。

喧嘩をふっかける

 「喧嘩をふっかける」は英語で何というでしょうか。気になったので,和英辞典をひくと,pick a fightという表現を見つけました(『スーパーアンカー和英辞典』学研)。

e.g. They picked a fight with me, saying I had lied.

pickを使うというのが新鮮でした。pickを『オーレックス英和辞典』(旺文社)で見ると,「文脈によって「選ぶ」側面,もしくは,「取る」側面のどちらかに重きが置かれた意味となる」とありました。この表現は,後者のイメージだといえます。「喧嘩という手段を選んだ」というイメージが含まれていると感じられます。
 因に,『スーパーアンカー和英辞典』(同上)には,fightは殴り合いけんかなのか,口げんかなのかがはっきりしないので,「口げんか」を明示したければ,argumentやquarrelを使うとありました。参考までに。
 余談ですが,上記にあげた『スーパーアンカー和英辞典』は,2012年12月に改訂され,第3版となっております。今回は第3版を使っています。『スーパーアンカー和英辞典』はとても良い辞書なので,一度ぜひ,手に取ってみることをお勧めします。