improve the opportunity

 以下は,the guardian(02/04/12付)からの抜粋です。

"Measures to tackle the fat, sugar and salt content of food and drinks and to improve the opportunities for physical activity are the type of developments we need to cut these predictions of future cancer cases," said Dr Kate Allen, the science and communications director at WCRF International.
http://www.guardian.co.uk/science/2012/feb/04/cancer-fat-salt-sugar-food

 ここで気になったのが,improve the oppotunitiesという表現です。improveの意味は「向上させる」ですが,ここではしっくりときません。そこで,辞書を引いてみると「十分に[うまく]利用する,<古>使う」とあります(『リーダーズ英和辞典』研究社)。<古>とありますが,現在では使われるのでしょうか。ためしにBritish National Corpusにかけてみると,improve the oppotunitiesでは全くヒットしません。また,improve the occasionでは1ヒットでした。ヒットした例文を以下に挙げます。

e.g. Bourne topped up his glass from the bottle of Chablis Wycliffe had provided to improve the occasion.

 やはり,今では既に使われない用法であるといえます。ですが,せっかくですのでimproveの語源について考えてみたいと思います。
 『リーターズ英和辞典』(同上)によれば,この語は古フランス語に由来し,proがprofit,すなわち「利潤」を意味するようです。OEDには,to turn something to profit or goood account, to make profitable use of something、to invest (money) to profitとあり,「ある物を有効に活用して、そこから利潤をあげること」というのが,元々の意味だったと考えられます。これが16世紀から17世紀にかけての用法です。実は,現在の「改良する」という意味が登場したのは18世紀以降のことだったようです。
 ここからは憶測にすぎませんが,当時の歴史的事情を考えると,ちょうど産業革命あたりの話となります。利潤を追求する時代にあったといえるでしょう。そのために,生産手段を「うまく利用する」必要がありました。また,生産方法を「改良」したり,「向上させる」必要がありました。そういった事情でimproveの意味が派生していったと考えられるのではないでしょうか。