得てして

 日本語で「得てして」とはどのような意味でしょう?先日,そんな質問を受けました。『デジタル大辞泉』(小学館)によると,「ある事態になる傾向のあるさま。ややもすると。ともすると。とかく。えて。」とあります。ふと,英語にするとどうなるだろうと思い,調べてみました。今回は「得てして」という表現を取り上げたいと思います。
 『新和英大辞典』(研究社)で「得てして」を調べると,oftenと出てきます。しかし,例文を見ていくと,他にも表し方がありました。例文を載せます。

There's a tendency for highly gifted people to suffer setbacks.
「優秀な人物はえてして挫折しやすいものだ」

Academics tend to be ignorant about commonsense matters.
「えてして学者は世間の常識にうとい」

Misfortune is likely to strike the same person several times.
「えてして不運は重なるものだ」

 oftenの他に,tend toやbe likely toなどの語句が用いられることがわかります。今回は,日→英という観点で取り上げましたが,逆を言えば,tend toやbe likely toを見たときに,文脈によっては「得てして」と訳した方がしっくる場合があるということになります。tend toやbe likely toの訳語を拡張しておく良いきっかけとなりました。