emic

 時折,大学院での研究内容に関する記事をアップすることがありますが,今回も研究をしているときに拾った英語表現を紹介します。私の研究はConversation Analysis(CA)すなわちEthnomethodologyの理論を英語教育にどのように生かしていけば,現在問題となっているコミュニケーション能力育成に貢献できるかということに焦点を当てています。コミュニケーション能力に関する一考察として,Firth and Wagner’s (1997) はSLA researchで重要なことを3つ述べています。

(1) sensitivity to contextual and interactional aspects of language use
(2) a broadening of the SLA database and more importantly
(3) an adoption of a more emic and participant-relevant perspective towards SLA research

言語学ではこのemicという語は,eticという語と対になって問題となります。emicは「イーミックな,文化相対的な(言語その他の人間行動の分析・記述において機能面を重視する観点に関していう)」(『リーダーズ英和辞典』研究社)。それに対して,eticは「エティックな,自然相的な(言語その他の人間行動の分析・記述において機能面を問題にしない観点についていう)」(『リーダーズ英和辞典』同上)。両者は主に,文化的な違いに焦点を当てて分析するのか否かという点で異なります。例えば,phonemicといえば「個々の音素」を指し,個々の音が出てくる環境や地域差,階級差などによって異なるという観点から分析がなされます。phoneticといえば,そのような差異は考慮にいれません。
 Firth and Wagner'sは文化相対的な見方をもっとSLA researchに導入すべきだと述べています。言葉と文化は切り離せないものです。そのような考え方を言語習得の際に取り入れることは重要な課題だといえます。