cross (adj.)

 以前も取り上げた,細井氏の『英文法汎論』(篠崎書林)より英語表現を拾います。第10章の「語の配置法」の箇所では,様々な語順について紹介されています。副詞の位置は日本人にとって厄介ですが,こちらについても詳しく説明がされています。ただ,やはり「口調がよい」からという理由で位置が決まる場合もあり,この辺りはネイティブの語感でしかわからないといったものもあるようです。ここでは,その中の例文にでてきたcrossを紹介します。

 They were never cross and always happy.―Galsworthy(p.198)

 ここで使われているcrossはもちろん形容詞です。この用法は主にイギリス英語によくみられます。『リーダーズ英和辞典』(研究社)によれば,「不機嫌な,怒りっぽい」とあります。LDOCEには,especially BrE angry or annoyingと定義されています。異なる2つの気持ちがクロスすると,不機嫌になったり,怒りっぽくなるということでしょう。
 また,『リーダーズ英和辞典』(同上)によれば,次のような比喩を用いて「ひどく気難しい,不機嫌である」という意味を表すとあります。

 ・(as) cross as two sticks
 ・(as) cross as a bear (with a sore head)
 ・(as) cross as a devil

どれも面白い比喩ですね。日本語ではこのようなたとえはしませんが,どれも何となくニュアンスが伝わってきます。