motivationの大切さ

 先日の記事(02/29/12)に載せたDY(02/04/12付)のWaseda professor helping restore students' confidenceの日本語versionを見つけたので,掲載します。

 「欠席は3回まで。10分以上の遅刻は認めない。毎回講義後に5行以上の感想を書いて提出すること」。9月、後期の授業が始まった早稲田大学(東京・新宿区)。英語で授業をする国際教養学部で、カワン・スタント教授(60)はこう宣言した。

 長文リポートを何度も書かせ、原稿なしでの発表もあるのは、「楽をしても成長はない」との考えからだが、一言付け加える。「私は、一人も見捨てない」

 スタント教授は中国系インドネシア人。貧しい境遇から日本で奨学金を得て、26歳で大学に進学。数々の苦難を乗り越え、日本の4大学で工学、医学など四つの博士号を得た経験が、「人生は挑戦の連続」という信念を生んだ。

 1993年、私立大学工学部の教授として招かれ、大学の厳しい現実に直面した。「8割の学生は授業が理解できない」と切り捨てる教授陣。学生の無気力、無感動は成長を期待されないためではないか。「やればできる」と学生を奮い立たせた。この結果、研究室では特許が認められるような研究も生まれ、「スタント効果」と呼ばれた。

 10年後に早大に移籍。現在は「デジタル技術の基礎」「アジアの高等教育」の講義のほか、モチベーション(動機付け)を研究するゼミも持つ。「入試を終えて目的意識を失い、他人と関わろうともしない学生の心を開くのは、人が心から語った実話」と、どの授業でも必ず全員に自己紹介させる。授業を選んだ理由や夢、悩みを共有し、仲間の話に耳を傾けるうち、少しずつ信頼関係が生まれていく。

 技術の講義でも、雑談には人生論が交じる。「困難は成長のチャンス。友だちになりなさい」「自分を変えられるのは自分だけ」。行動を起こす勇気、利他の精神の尊さについて、経験談を交えて熱弁をふるう。無反応な学生には自ら声をかけ、深夜まで学生の相談に耳を傾ける。授業の感想用紙から学生の変化を知り、意欲の芽を育てる手がかりを探す。

 同大大学院で学ぶ中国人留学生の蘇霞さん(42)は、スタント教授と学外の講演会で出会い、「人が変わる秘密を探りたい」と今年5月から講義のアシスタントを願い出た。退学寸前だったり、大学に居場所がなく失望していた学生が、目標に向けて行動し始める姿を目の当たりにした。自身も「いずれ教育学を研究したい、という新たな夢ができた」。教授がともした意欲の火は、静かに広がっている。(片山圭子、写真も)

 ▼スタント教授による大学教員の心得

 〈1〉クラスに合わせて戦略的な授業を

 〈2〉無自覚、不用意な指導を避ける

 〈3〉学生の可能性を心から信じる

 〈4〉学生の意見に敏感、柔軟に

 〈5〉個々人に目配りし、まとまりあるクラスに

(2011年12月14日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20111214-OYT8T00146.htm