「play+the+楽器」のtheの正体

 先日,「play+the+楽器」のときにtheがつくのか,という質問を受けました。日本人にとって,冠詞の有無や不定冠詞か定冠詞かなどという問題はいつまでたっても難しく感じられますね。
 まず,楽器なら必ずtheがつくのか。そうではありません。Look at that piano.やThis is a piano.などというときは,the以外の冠詞や限定詞がきます。つまり,「play+the+楽器」のときにtheがつくといえます。
 基本的な知識の確認です。theのイメージは「1つに決まること」です。この「play+the+楽器」の場合もやはり,そのイメージは変わらないようです。大西泰斗先生が書かれた『一億人の英文法』(東進ブックス)により,引用します。

「ピアノを弾いている」のthe pianoは特定の物体(ピアノ)を指しているわけではありません。だとすれば何を意味しているのでしょうか。それはみんなに共通するイメージ。「ピアノを弾いている」と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?「鍵盤を叩くとポロローンと音がする楽器」を思い浮かべますね。「あ,あれを弾いたんだね」と,みんながピンとくる(1つに決まる)―それがthe piano。1つにきまる―だからtheが使われているのです。

 このtheに大西先生は「ピン!とくる」theと名付けています。ネィティヴの感覚はそのように働いているのですね。
 ただし,playの後に続く楽器の前に置かれるtheはとりわけ米語において省略されることがあるようです(『ウィズダム英和辞典』三省堂)。また,文脈によってa,one's,thisなどが用いられることもあります(『ウィズダム英和辞典』同上)。

 e.g. Someone's playing a piano.
 e.g. Daddy would play my piano and sing before he died.

 今回引用をさせていただいた大西先生の著書には「話すための英文法」に焦点を当てたものが多いので,新たな発見や面白い発見があります。